鍼灸治療による不妊治療

 

近頃、不妊症の方が増えています。その原因として、

・社会的背景として女性の社会進出におけるストレスの増加、生活リズムの乱れ、
食べ物のインスタント化、などがあげられます。これらの生活を続けていると
不妊症のみならず健康でいられるはずがありません。
・また、結婚の晩婚化も不妊症の増加に拍車をかけています。
・不妊症の患者さんを診ていて感じることがあるのですが、これはほぼ全員に共通する
といっても過言ではありませんが、みなさん体に冷えがあるということです。
冷えは女性の病気の7~8割において原因といわれるほどです。
この冷えがあると、ホルモンバランスの乱れが起こり、排卵周期が乱れ、
不妊に繋がると考えています。
当院ではまずはじめに以上にあげた原因を正すこと、これが治療の基本だと考えます。

 

■不妊症かなと思われたときに何をすればいいか?

 

当院でお勧めしているのがまず
・基礎体温の測定と記録をする
これにより排卵の有無や排卵日が予測できます。
・ご夫婦で病院の基本検査(精液検査・頚管粘液検査・超音波など)を受診する
大体の原因を把握できます。約1ヶ月ほどで終了します。

 

■西洋医学における不妊治療

 

・一般不妊治療
・高度生殖医療(ART)

大きくこの二つに分けられます。
一般不妊治療とは従来から行われてきた不妊治療で、各種ホルモン療法・人工授精・配偶子(精子や卵子のこと)の操作は精子のみにとどまるものとされます。

高度生殖医療とは体外受精―胚移植の成功を機に発展しつつある治療法で、体外受精や顕微授精などのことをさします。

 


2.東洋医学から診た不妊症

 

東洋医学では不妊をあらわす用語として『不孕』といわれます。この言語はすでに1500年も前の東洋医学の書物に出てきています。また東洋医学の産婦人科専門書もすでに存在していました。このように東洋医学では早い時期に産婦人科の分野は分科され研究されていました。

 

不孕の原因として考えられるのが多くは、『腎虚』『肝鬱』『瘀血』『痰湿』というものがあげられます。
簡単に説明しますと…
『腎虚による不孕』とは
先天的に虚弱で腎気(生体エネルギー)の不足、または生活の不摂生などにより体力低下するなどにより腎気が不足して女子胞(子宮)へいく気や血が滋養されず妊娠することができなくなる。
症状としては、腹が冷える、性欲減退、腰下肢がだるく無力、尿が淡色で多い、月経量は少なく周期は長いまたは無月経など。

 

『肝鬱による不孕』とは
精神的ストレスや怒りなどが要因となり気血の流れがうまくいかなくなる。
症状としては肩こり、胸のつかえ、月経異常、無月経、卵巣機能不全など。

 

『瘀血による不孕』とは
瘀血とは血の滞りを意味し、様々な原因によりこのような状態を引き起こす。
症状としては身体の痛みや腫瘤、冷え性、月経困難、無月経、子宮筋腫など。

 

『痰湿による不孕』とは
肥満体質の人で痰湿が体に滞り子宮が閉塞された状態。
症状としては太りやすく、筋に力がなく、汗をかきやすく疲れやすく、月経不順で白帯下が多い。

 

治療としては
まず詳しく体調や生活環境(生活リズム、食事、精神的ストレスなど)を聞いていきます。
それをもとに触診(脈診、腹診、背部診など)をしていきます。
そしてこれらの証にあわせて経穴(ツボ)を選穴し、治療に処方します。

 

但しこれらの症状に対しての治療は、体質改善の要素が強いですので症状の度合いによっては時間を要する場合があります。

 


3.不妊症に鍼灸はどのように作用しているの?

 

不妊に対する鍼灸治療の効果についての学会論文や文献等を挙げてみますと
■中村万喜男ら 不妊症の生姜灸治療「東方医学」1981
背部や腹部の施灸により原発性および続発性不妊症患者の82%が妊娠

 

■鈴木裕明ら 難治性不妊に対する鍼灸治療の検討「全日本鍼灸学会雑誌」2002
難治性不妊(結婚5年、不妊専門医療機関で2年以上治療)の症例で、子宮内膜形状不良に対し、
鍼灸治療を継続的に行った。
子宮内膜形状不良があると胚移植を行う際、着床率が非常に低くなる。
結果は子宮内膜形状が改善された例が54%に見られた。また妊娠に至ったのは45%だった。

 

■lisa bet Stener-Victorinら 2000
子宮動脈の血流に抵抗性のある不妊患者に対し低周波鍼通電療法を施行した。
鍼治療後の子宮動脈改善および10~14日後の改善維持傾向を示した。

そのほかにも様々な論文が発表されていますが、まとめると鍼灸治療は不妊症に対し以下のような効果が期待できると考えられています。
子宮への血液供給量が増え、子宮内膜の形状が良好となり、自然妊娠においても体外受精に
よる胚移植においても妊娠率が向上することが期待される。

卵巣への血流が改善されることにより卵や胚の質の向上が期待できる。
人工授精、体外受精を受けている段階でも、補助的に鍼灸治療を受けることによりにより
妊娠率が上がることが期待される。

ストレス由来の機能性不妊(原因不明不妊)においても、ホルモンバランスの正常化などにより
妊娠率が向上することが期待される。

 

※ 不妊症で鍼灸治療を受ける際の注意点
治療を受けるときは以下のことに注意してください。

●鍼灸治療のみで必ず妊娠できるとは限りません。

鍼灸治療のみで妊娠される方ももちろんいらっしゃいますが、機能的な原因(瘀血、ホルモンのバランス以上など)による不妊症に限られます。不妊の原因として器質的な原因(卵管采の形状不良、卵管閉塞、子宮奇形など)がある場合は相応の治療を病院で受けなればなりません。そのうえで鍼灸治療を受けるということが前提となります。

 

当院では以上の理由から、必ず病院での検査を受診することをお勧めします。

 

●妊娠しやすい条件があります。

まず年齢的なものとして、若いほど妊孕力が高いということ。20歳代と比べ35歳になると妊娠率は半減するといわれ、35歳から徐々に低下し40歳以上になると妊娠に至るのが困難で、流産率も上がるといわれています。ただ可能性が0というわけではないのでお子様がほしいという場合は早めに行動を起こすことをお勧めします。
それから、生活環境(ストレス・生活リズム・冷えなど)、食事(内容・時間など)などにより妊娠率が若干変化してきます。当院では生活環境や食事内容の見直しをしてより妊娠しやすいようにサポートします。

●治療期間はそれぞれ違います。

鍼灸治療を開始して妊娠に至るまでの期間は平均して約9から10ヶ月くらいです。しかしこれはあくまでも平均的な期間であり、当然個人差があります。人によってはそれ以下の場合もありますし、それ以上かかる場合もあります。それらの理由により当院では最低6ヶ月以上の治療の継続が必要と考えます。

 

可能な限り早くお子様が授かるように、当院では体質、症状など検討し当院で行う治療はもちろんですが自宅療養、食事、養生などあらゆる角度から全力でお手伝いをします。
一緒にがんばりましょう!