日本鍼灸師会全国大会 in いばらき Tsukuba 参加報告

大会概要と参加のきっかけ

 2025年10月4〜5日、つくば国際会議場で開催された

第20回日本鍼灸師会全国大会 in いばらき Tsukubaに参加しました。

 今大会は「求められる鍼灸 求める鍼灸」をテーマに、

緩和医療・不妊鍼灸・医療連携・将来展望など多岐にわたる講演や討論が行われました 。

 現地開催とオンライン配信が併用され、鍼灸の最新の知見と課題を共有する貴重な機会となりました。全国から集まった鍼灸師の熱気に触れられるのも楽しみの一つであり、学びと交流を期待して参加しました。

印象深かったYNSAイントロダクション講座

 大会で特に印象に残ったのは

2日目の特別講座「YNSAイントロダクション講座〜自律神経にアプローチする新しい鍼治療〜」(講師:加藤直哉先生)です 。

YNSA(山元式新頭針療法)は1973年に山元敏勝医師が考案し、1975年に国際舞台で発表された頭皮のマイクロシステム鍼治療で、痛みや麻痺の治療に世界中で広く用いられています 。

伝統的な経絡や経穴に基づくのではなく、合谷診断・頸診断・上腕診断・腹診などの独自の診断法と、基本点・感覚点・脳点・Y点などの治療点から構成されることが特徴で、基本の治療点は約40個と簡便です 。

 講座では、触診で筋張力や圧痛の変化を診断しながら適切な頭皮点を選ぶ方法が紹介されました。YNSAは理論がシンプルで習得しやすく、新人でも扱いやすいこと、鍼の効果が即座に体感できること、そして主に頭部に刺鍼するため身体の他の部位は自由に動かせるので手技療法や運動療法と併用しやすいことなどが強調されました 。

 講師は自律神経の乱れが多様な症状に関与している点を示し、YNSAが交感・副交感神経のバランスを整えることで症状を改善する新しいアプローチであると述べられました。

YNSAの臨床応用と学び

 臨床応用の話では、頭皮にある独自の反射ゾーンを用いることで、脳血管障害の後遺症、パーキンソン病、癌性疼痛、神経痛、耳鳴りやめまい、肩・腰・膝などの痛みなど幅広い症状に対応できることが紹介されました 。

 各反射点は全身の臓器・筋肉に対応しており、痛みや運動障害だけでなく、気分障害や自律神経失調・免疫疾患への効果も期待されています 。例えば、研究ではYNSAを用いた脳卒中後遺症患者に対し、感覚・運動機能だけでなく認知機能や記憶力も改善したことが報告されており、心の状態や脳機能へのアプローチとしても注目されています。また、YNSAは気持ちの落ち込みや不安などのムード障害にも適応があり、自律神経調整とともに精神面の安定にも寄与する可能性を感じました。

 講座を通じて、YNSAの最大の魅力は“簡便なのに即効性が高い”ことだと実感しました。診断によって反応点を見つけ出し、数本の鍼を頭皮に打つだけで筋緊張や痛みが軽減し、患者さん自身もその変化を直後に感じ取れるため、治療へのモチベーションが上がります。

 さらに、鍼灸治療にとどまらず徒手療法や運動療法、普段の経絡治療と組み合わせることで相乗効果が期待できる点も大きな魅力です 。今後、自院の臨床でも積極的に取り入れ、患者さんの幅広い悩みに応えられるようバージョンアップしていきたいと強く感じました。

その他の講演と学び

 1日目は緩和医療をテーマとした基調講演から始まり、医師と鍼灸師の連携による緩和ケアや癌専門病院での鍼灸治療の現状報告などがありました 。また、不妊鍼灸の国内標準化を目指す講演や、視覚障害者への指圧指導現場の実技研修、学生交流会など多彩な企画があり、臨床技術と教育の両面で学びが得られました。

 2日目はYNSA講座に続き、北辰会方式の鍼灸治療と医師―鍼灸師の連携に関する講演、そして「鍼灸師はこのままでよいのか〜50年後、100年後の鍼灸師を語ろう〜」と題した討論会が行われました 。さらに市民公開講座ではNHKのディレクターを招いて鍼灸の現在地と可能性を分かりやすく紹介し、地域連携や療養費請求の実務など実践的な講座も豊富でした 。

 スポーツトレーナー研修やあはき法の問題点を検討する講座など、鍼灸師としての多角的な知識を高める場が多かったことも印象的です。

全国の仲間との交流と将来への展望

 会場では、普段はなかなか会えない全国の鍼灸師の先生方と意見交換ができ、症例の共有や治療への考え方など多くの刺激を受けました。緩和ケアや不妊治療など医療分野との連携が進む中で、鍼灸師が求められる専門性とは何か、今後どのように社会に貢献していくのかというテーマが至る所で議論されていました。

 討論会では、50年後・100年後の鍼灸師像を見据え、教育や制度改革、研究の重要性が強調され、鍼灸業界全体の方向性について考える貴重な機会となりました 。

まとめと今後の抱負

 今回の全国大会では、YNSAという新しい頭皮鍼治療の可能性を学び、その即効性と応用範囲の広さに感動しました。独自の診断法と反射点を活用することで、痛みや運動障害だけでなく、気分障害や内臓疾患、脳機能の改善にも効果が期待できることを知り、臨床の幅を大きく広げることができると確信しました 。また、緩和ケアや不妊治療、医療連携など他の講演からも多くの知見を得られ、鍼灸師として社会に求められる役割の大きさを改めて実感しました。

 全国の先生方との交流から得た刺激と学びを糧に、これからの臨床をバージョンアップし続けていく覚悟です。YNSAをはじめとする新しい技術を積極的に取り入れつつ、患者さん一人ひとりに寄り添った治療を提供していきたいと思います。

 今後もこのような学術大会に積極的に参加し、鍼灸業界の発展に貢献していきます。

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