鍼灸は卵巣にどんな影響があるの?~鍼灸論文から期待できる効果を解説
妊活や体外受精を続けていると、
「鍼灸は卵巣にも関係がありますか?」
「卵の育ちに何かプラスになりますか?」
と気になられる方も多いと思います。
当院でも、不妊治療中の患者さんからこうしたご相談をいただくことがあります。
結論からいえば、現時点では鍼灸で卵巣機能が必ず改善すると断定はできません。
ただし、卵巣の反応が弱い方において、体外受精の成績に関係する指標が改善する可能性は研究で示されています。
今回参考にした論文
2020年の系統的レビューでは、poor ovarian response(卵巣の反応が弱い方)で体外受精を受ける女性を対象に、鍼灸の効果が検討されました。
その結果、臨床妊娠率、AMH(抗ミューラー管ホルモン)、AFC(胞状卵胞数)、採卵数の改善が示唆されました。
AMHは卵巣予備能の参考になる指標、AFCは超音波でみる卵胞数の目安です。
つまりこの論文は、鍼灸が卵巣の反応性に関わる可能性を示した研究として参考になります。
一方で、対象研究は3本と少なく、研究ごとの方法にも差があるため、著者自身も確定的な結論は難しいとしています。

鍼灸は卵巣にどう作用すると考えられているのか
ここで誤解したくないのは、鍼灸は「卵巣を直接元に戻す魔法の治療」ではないということです。
現在考えられているのは、鍼灸が
- 神経やホルモンの調整
- 卵巣や子宮まわりの血流への関与
- ストレスや緊張の軽減
- 自律神経バランスの調整
などを通して、体外受精に向かう体の状態を整える補助になるのではないか、という考え方です。
体外受精では「いつ受けるか」も大切
体外受精における鍼灸は、ただ1回受ければよいというものではなさそうです。
2024年のメタ解析では、IVF-ETの流れの中で、排卵誘発中や移植前など、適切な時期に継続して行うことが重要かもしれないと報告されています。
一方で、胚移植当日だけの鍼灸は、利益がはっきりしなかったとされています。
この点から考えると、
体外受精での鍼灸は採卵や移植の“その日だけ”の対策というより、
周期全体を通してコンディションを整えるものとして位置づけるほうが自然です。
当院が考える、妊活中の鍼灸の役割
妊活中は、卵巣のことだけでなく、
- 冷え
- 睡眠の質
- 首肩こり
- 胃腸の不調
- 疲れやすさ
- 気持ちの張りつめ
など、いろいろなことが重なります。
そのため当院では、「卵巣だけを見る」のではなく、妊活を続けやすい全身状態を整えることを大切にしています。
体外受精を受ける方では、採卵前や移植前に体調の波が出やすいこともあります。鍼灸は、その時期の緊張や不調をやわらげながら、病院での治療を支える一つの方法になり得ます。
まとめ
現在の研究からは、鍼灸が
- 卵巣反応が弱い方のAMHやAFC
- 採卵数
- 妊娠率
に良い影響を与える可能性が示されています。ただし、まだ研究数は多くなく、すべての方に同じような結果が出るとは言えません。
ですので、鍼灸は体外受精に代わるものではなく、体づくりを支える補助療法として考えるのが自然です。
病院での治療と並行しながら、少しでも良い状態で採卵や移植に向かいたい。そのようにお考えの方は、鍼灸も選択肢の一つになるかもしれません。
引用論文
Jang S, Kim KH, Yoon HM, Kim SY. Acupuncture for in vitro fertilization in women with poor ovarian response: a systematic review. Integr Med Res. 2020;9(3):100395.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32322482/
補足として参考にしたレビュー
Wang X, Xu HM, Wang QL, et al. The Timing and Dose Effect of Acupuncture on Pregnancy Outcomes for Infertile Women Undergoing In Vitro Fertilization and Embryo Transfer: A Systematic Review and Meta-Analysis. 2024. Djaali W, et al. Management of Acupuncture as Adjuvant Therapy for In Vitro Fertilization. 2019. Stener-Victorin E, Humaidan P. Use of acupuncture in female infertility and a summary of theories and mechanisms of action. 2006.


